「2日目の三方五湖(クルーズ・展望台)」
翌朝、気持ちいいぐらいの快晴だった。今日は盛りだくさんのスケジュールだ。
まずゆっくり起きて、ホテルの食堂へ向かった。朝食も豪華なもので、私たちにとって大満足の味だった。母にとっても、満足だったようだ。
食後、無料のコーヒーを持って部屋に戻り、10時頃の出発まで、母と娘と三人で飲みながら過ごした。母は変わらず、ここに泊まりに来ていることをしっかり認識できていないのか、「今日は何をするの?」と何度も何度も確認してきた。
それはそれで、旅行の気分だ。都度、認識してもらえればいい。「悪いもんじゃないな」と思った。
10時にゆっくりホテルを出て、次の予定である「三方五湖ネイチャークルーズ」へ向かった。妻は一足先に現場へ。母と私と娘は、ホテルの近くを散歩しながらクルーズ乗り場へ向かう。母の足取りは軽く、上り坂を歩いていた。だが、先に出た妻が戻ってきて、結局、車に乗って乗り込み場所まで行くことになった。
ゴールデンウィークということもあり、クルーズ乗り場のお客さんはかなりの人数だった。予約していたので、特に順番待ちはしなかった。少し早めに着いたので、乗り込み場所の休憩所でコーヒーを飲みながら、少し長く待っていた。
ところが、母が来たと見て妻は先に船へ向かったのに、後から出発した娘と二人は、なかなか乗り場に戻ってこない。ほぼ全員が乗り込んだ頃、残っていたのは、自分を含めて三人だけになっていた。
母に声をかけて乗り場へ向かうと、待っている母を前に、若干イライラしながら歩いた。他の人に迷惑がかかる状況は、やっぱりどうしても腹が立ってしまう。結局、一人で二人を誘導して船に乗り込んだ。
このクルーズ船は、日本でここだけの電池推進遊覧船だ。エンジン音もなく、振動もない。ほとんど揺れずに進む船になっている。船酔いが心配な母が、クルーズで楽しめるだろうと選んだのは、まさにこの静かな船だった。
出発すると、本当に振動はなかった。色んな野鳥や地層を眺めながら、解説する時に船が止まって、外に出て水の風景を眺めることもできた。そういうふうに、快適にクルーズの旅を過ごすことができた。
1時間ちょっとのクルーズを終えた後、車を走らせて、三方五湖のレインボーラインを気持ちよく走り、展望台へと向かった。
展望台にたどり着いたが、観光客でいっぱいだった。そこはかなり観光客向けに整備されていて、ケーブルやスキーのリフトみたいなもので登る仕組みになっていたので、喜んで上に上がっていく人だかりで溢れていた。妻と娘はリフトで上に上がり、母と自分はケーブルで上に上がっていったため、2組ははぐれはぐれになってしまった。
上に上がっても人ばかりで歩くのもままならない。私は母を連れて、どこか座ってゆっくりできる場所を求めてさまよった。運が良いことに、茶店のテラスみたいなところに座れる席があったので、2人でそこに座ってしばらく休んでいた。
その後、妻と娘と合流し、展望台の中も散策して歩いた。眺めはやっぱりとても良くて、左を見れば三方五湖、右を見れば若狭湾と、最高の展望だった。
だけど、一つだけネックだったのは、五木ひろしの歌が鳴り響いているモニュメントが存在したことだ。なぜか今回の旅には、五木ひろしと縁がある。すでに母から「五木ひろしはあんまり好きではない」と言われ、五木ひろし丼も断念していたのに、ここでまた出会うとは思ってもみなかった。
しかも、そのモニュメントに手をかざすと、センサーが反応して五木ひろしの歌が流れてくる仕組みで、観光客にとっては珍しいのかもしれないが、こちらとしては良い迷惑だ。案の定、面白がった観光客によって絶え間なく流れる歌やモニュメントには、母は目もくれなかった。
「行きたくない」「行きたい」の押し問答の末、私たちは展望が一望できる足湯に向かっていった。結局、絶景の眺めの中、足湯を堪能し、空色のソフトクリームを家族で舌鼓をうったあと、ぼちぼち家族全員が人の群れに酔ってきたため、足早にリフトとケーブルで展望台をあとにした。

そのあとは、三方五湖レインボーラインという道を、来たときとは反対側に向かってひたすら走らせた。
そのまま帰途につく予定だったが、途中で「梅の直売所」というところに車がたくさん止まっているのを見つけ、興味を惹かれて立ち寄ることにした。どうやらここは福井梅の発祥の地らしい。梅好きの家族にとっては絶好の直売所だ。そこでカリカリ梅や、梅が丸ごと入ったお菓子をお土産に買った。
レインボーラインを降りた途中、何度か道の駅などに立ち寄りつつ、結局高速に乗って福井県鯖江市に戻った。
明日から始まる「つつじまつり」がある西山公園に、つつじを見に立ち寄る。それが明日だというのに、もう既に屋台がいくつも店を出していた。そこでつつじを見ながら屋台で色々食べ、その後に北陸にしかないラーメン屋さん「8番ラーメン」で夕食を済ませたあと、母を実家に連れて帰って今回の旅は終わりとなった。
実家についたときには、母はもう1泊旅行に行ったことは忘れている様子だった。だけど、この体験そのものが母へのプレゼントだったので、それは端から承知済みのことだった。
今日の旅の行程でも、「いる」「いらない」のやり取りは繰り返されるなど、いろんな一幕があった。だけど多分、母は家族とそんなやり取りをしながら、どこかへ出かけること自体が久しぶりだったと思う。連れて行ってよかった、という満足感しかなかった。
今後もこんなお出かけをする機会を持てればいいと思いながら、あとどれだけその機会を作れるかわからないという寂しさも、余韻で残ってしまった。
本当に、思い出に残る旅だった。

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